ブログ「女将日記」
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2026年2月12日 No.2 桜と雪と足跡と。
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熱海に、珍しく雪が積もりました。
ちょうど満開を迎えていた熱海桜に、 白い雪が重なる夜でした。
音もなく降り続いた雪。 ふと外の気配が気になって、 そっと庭へ出てみます。
町は白く、しんと静まり返り、 灯りのにじむ夜の空気まで やわらかく感じられます。
せっかくの雪景色。 裏の弁天さまの桜はどうしているかしらと、 そのまま足をのばしました。
すると——
まっさらなはずの雪の上に、 点々と続く小さな足跡。
どうやら、私より先に この景色を見に来た先客がいたようです。
満開の熱海桜は、 薄紅の花をいっぱいにまとった枝に、 白い雪を静かにのせ、 夜の中で荘厳な姿を浮かび上がらせていました。
街灯に照らされた桜は、 昼とはまるで別の表情。
足元には、花びらの影。
冬と春が重なり合う、その一瞬に、 ただただ見惚れてしまいました。
あの足跡の主も、 同じように立ち止まり、 見上げていたのでしょうか。
冷えた体を、 一棟貸しの温泉宿・羽衣楼へ戻って ゆっくりとあたため直し、 湯気の向こうに、雪をまとった桜の姿を思い返しました。
そして翌朝。
羽衣楼の庭も一面の雪景色。
静かに積もった白の上に、 ひらひらと舞い降りる桜吹雪。
雪の上に、春がそっと重なる瞬間を、 コーヒーを飲みながら、いつまでも眺めていました。
桜と雪と足跡。
夜に始まり、朝へと続く、 ほんのひとときの奇跡のような景色。
きっと、この日だけの贈りものです。
熱海で過ごす冬のひとときも、 また格別です。
羽衣楼 女将